人が音を聞くメカニズム(4) ~耳小骨の実力~
- 2018/02/20
- 17:09
人が音を聞くメカニズム(1) ~音は、空気の中を漂う~
人が音を聞くメカニズム(2) ~そんなに凄いことをやってるんだ!~
人が音を聞くメカニズム(3)~最も小さな骨~
も併せてどうぞ。
前回は、「つち骨」「きぬた骨」「あぶみ骨」から成る、人間の体内で最も小さい骨
“耳小骨”について、お話しました。
今回もこの耳小骨について、さらに詳しく、ウンチクも交えながらお話したいと思い
ます。
まず、耳小骨のルーツってご存知でしょうか?
あくまでも学説ではありますが、この耳小骨、太古の昔、人類がまだ魚類だった
時代は顎骨(あごの骨)だったそうです。
魚類が陸に上がり、ヒトへと進化して行く過程で・・・恐らくは生きていく
ために聴覚を発達させる必要があったのでしょう・・・あごの骨が音を聴く
ための骨に転用されていったのです。
詳しくは、岩波講座、言語の科学2「音声」などに書かれていますので、
さらに興味のある方は、こちらで勉強して・・・筆者にも教えてくださいね。
また、「つち骨」「きぬた骨」「あぶみ骨」って、なんか凄く変な名前だと
思いませんか?
背中の骨は「背骨」、お尻の骨は「尾てい骨」っていう風に、普通は分かり
やすい名前がついているんですけどねぇ。
この名前の由来は,実は全てその形状から来ているんです。
つち → 槌 (兎が月のうえで持っているやつです)
きぬた→ 砧皮などをなめしたりするときのたたき台.
多分,槌と砧を組にして考えたんだと思います。
あぶみ→ 鐙 これは形,そのままですね。
体内で最も小さくて、一般人が肉眼で見ることはまず無い骨なのに、わざわざ、
その形状や役割から名前を付けているなんて、なんか面白いですよね。
最初に、この骨の存在を発見して、その形や動きに感動した人が名づけたのが、
そのまま残ったんでしょうか?
ところで、前にも書きましたが、耳小骨の役割は、鼓膜のわずかな揺れを蝸牛の
中に伝えることです。
ところが蝸牛というのは、中が液体で満たされていて、ちょっとやそっとの力では
「空気の揺れ→鼓膜の揺れ」が伝わらないんです。
さらに困ったことに、蝸牛というのは、とてもデリケートな器官でもあるので、強い
揺れ(大きな音)が入ってくると、今度は簡単に壊れてしまいます。
さあ、困りました!
この難題を解決しているのが耳小骨なんです。
鼓膜のわずかな揺れを強く正確に蝸牛に伝え、さらに大きな揺れは入れずに、弱
くてデリケートな蝸牛を守る機能も併せ持つ、神様が創った最高傑作!
と言ったら言い過ぎかもしれませんが、これは、なかなかに良くできた精密機械な
んです。
これらの機能のキーワードは、
“てこ”と“面積の比”
そして中耳筋(耳小骨筋)と呼ばれる、これまた小さな小さな筋肉なんです。
前に、「つち骨」と「きぬた骨」、「きぬた骨」と「あぶみ骨」の間には関節があって、
それぞれがまるで扉の蝶番のような動きをしていると書きました。
ここで、実際は「きぬた骨」は「つち骨」よりも短いので、ここの構造がちょうど
“てこ”の役割を果たすのです。
さらに、鼓膜の面積は、あぶみ骨がくっついている蝸牛の外側の窓の面積よりも
10倍以上大きいということが、とても強く作用します。
想像してみましょう。
鼓膜という大きな膜があります。
鼓膜の裏には、「つち骨」と「きぬた骨」が蝶番のような構造でくっついていて、長さ
は「きぬた骨」の方が短いわけです。
鼓膜が押されると、この構造が“てこ”のような働きをして力を強め、「あぶみ骨」
に伝わります。
「あぶみ骨」は、小さな小さな、鼓膜の1/10以下の面積の窓に繋がっています。
ここでは、尖がった鉛筆を想像してみましょう。
先が尖がった鉛筆の芯の先を手の平に充てて、上から少しだけ押してみると・・・
わずかな力なのに、すごく痛いでしょう?
大きな面積(鉛筆の底)に加わった力が、小さな面積(尖がった鉛筆の芯)に集中
することによって、わずかな力が強いエネルギーとして伝わっているからです。
同じ事が、あなたの耳の中でも起きているのです。
鼓膜に加わった力が、小さな「あぶみ骨」に集中して強いエネルギーとなっている
のです。
そして、耳小骨同士は、ただ、くっついているわけではありません。
お互いをくっつけるための、小さな筋肉があるんです。
この筋肉は、大きな音が入ってくると自動的に収縮して(縮まって)、今度は一転し
て耳小骨の動きを抑えます。
これは「中耳反射」と呼ばれる現象で、これがあるから、大きな音が入って来た時
は、デリケートな蝸牛を守ることが出来るのです。
鼓膜からあぶみ骨へ、そしてとても面積が小さい蝸牛の窓へと・・・
肌ではほとんど感じることが出来ないような、ごくわずかな空気の揺れは、
耳小骨によって増強されて、蝸牛の中のリンパ液を、今日も元気良く揺らし続けて
いるのです。
つづく-> 人が音を聞くメカニズム(5) ~ あの渦巻きは何だ!? Part1 ~
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人が音を聞くメカニズム(2) ~そんなに凄いことをやってるんだ!~
人が音を聞くメカニズム(3)~最も小さな骨~
も併せてどうぞ。
前回は、「つち骨」「きぬた骨」「あぶみ骨」から成る、人間の体内で最も小さい骨
“耳小骨”について、お話しました。
今回もこの耳小骨について、さらに詳しく、ウンチクも交えながらお話したいと思い
ます。
まず、耳小骨のルーツってご存知でしょうか?
あくまでも学説ではありますが、この耳小骨、太古の昔、人類がまだ魚類だった
時代は顎骨(あごの骨)だったそうです。
魚類が陸に上がり、ヒトへと進化して行く過程で・・・恐らくは生きていく
ために聴覚を発達させる必要があったのでしょう・・・あごの骨が音を聴く
ための骨に転用されていったのです。
詳しくは、岩波講座、言語の科学2「音声」などに書かれていますので、
さらに興味のある方は、こちらで勉強して・・・筆者にも教えてくださいね。
また、「つち骨」「きぬた骨」「あぶみ骨」って、なんか凄く変な名前だと
思いませんか?
背中の骨は「背骨」、お尻の骨は「尾てい骨」っていう風に、普通は分かり
やすい名前がついているんですけどねぇ。
この名前の由来は,実は全てその形状から来ているんです。
つち → 槌 (兎が月のうえで持っているやつです)
きぬた→ 砧皮などをなめしたりするときのたたき台.
多分,槌と砧を組にして考えたんだと思います。
あぶみ→ 鐙 これは形,そのままですね。
体内で最も小さくて、一般人が肉眼で見ることはまず無い骨なのに、わざわざ、
その形状や役割から名前を付けているなんて、なんか面白いですよね。
最初に、この骨の存在を発見して、その形や動きに感動した人が名づけたのが、
そのまま残ったんでしょうか?
ところで、前にも書きましたが、耳小骨の役割は、鼓膜のわずかな揺れを蝸牛の
中に伝えることです。
ところが蝸牛というのは、中が液体で満たされていて、ちょっとやそっとの力では
「空気の揺れ→鼓膜の揺れ」が伝わらないんです。
さらに困ったことに、蝸牛というのは、とてもデリケートな器官でもあるので、強い
揺れ(大きな音)が入ってくると、今度は簡単に壊れてしまいます。
さあ、困りました!
この難題を解決しているのが耳小骨なんです。
鼓膜のわずかな揺れを強く正確に蝸牛に伝え、さらに大きな揺れは入れずに、弱
くてデリケートな蝸牛を守る機能も併せ持つ、神様が創った最高傑作!
と言ったら言い過ぎかもしれませんが、これは、なかなかに良くできた精密機械な
んです。
これらの機能のキーワードは、
“てこ”と“面積の比”
そして中耳筋(耳小骨筋)と呼ばれる、これまた小さな小さな筋肉なんです。
前に、「つち骨」と「きぬた骨」、「きぬた骨」と「あぶみ骨」の間には関節があって、
それぞれがまるで扉の蝶番のような動きをしていると書きました。
ここで、実際は「きぬた骨」は「つち骨」よりも短いので、ここの構造がちょうど
“てこ”の役割を果たすのです。
さらに、鼓膜の面積は、あぶみ骨がくっついている蝸牛の外側の窓の面積よりも
10倍以上大きいということが、とても強く作用します。
想像してみましょう。
鼓膜という大きな膜があります。
鼓膜の裏には、「つち骨」と「きぬた骨」が蝶番のような構造でくっついていて、長さ
は「きぬた骨」の方が短いわけです。
鼓膜が押されると、この構造が“てこ”のような働きをして力を強め、「あぶみ骨」
に伝わります。
「あぶみ骨」は、小さな小さな、鼓膜の1/10以下の面積の窓に繋がっています。
ここでは、尖がった鉛筆を想像してみましょう。
先が尖がった鉛筆の芯の先を手の平に充てて、上から少しだけ押してみると・・・
わずかな力なのに、すごく痛いでしょう?
大きな面積(鉛筆の底)に加わった力が、小さな面積(尖がった鉛筆の芯)に集中
することによって、わずかな力が強いエネルギーとして伝わっているからです。
同じ事が、あなたの耳の中でも起きているのです。
鼓膜に加わった力が、小さな「あぶみ骨」に集中して強いエネルギーとなっている
のです。
そして、耳小骨同士は、ただ、くっついているわけではありません。
お互いをくっつけるための、小さな筋肉があるんです。
この筋肉は、大きな音が入ってくると自動的に収縮して(縮まって)、今度は一転し
て耳小骨の動きを抑えます。
これは「中耳反射」と呼ばれる現象で、これがあるから、大きな音が入って来た時
は、デリケートな蝸牛を守ることが出来るのです。
鼓膜からあぶみ骨へ、そしてとても面積が小さい蝸牛の窓へと・・・
肌ではほとんど感じることが出来ないような、ごくわずかな空気の揺れは、
耳小骨によって増強されて、蝸牛の中のリンパ液を、今日も元気良く揺らし続けて
いるのです。
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